夢や希望は大事ですか?

 年長さくら組さんたちが卒園する時期になりました。毎年、卒園式でさくら組さんたちは自分の将来の夢について語ります。大人たちは、おぉーっ!っとなりながら、その夢に聞き入っているのですが、実は、園長は「別に無理に夢なんか持たなくても、大丈夫だよ」って思って見ているのです。みんなで夢を語ると、まるで夢のないこどもはいけない子みたいになってしまう。だから、ともだちに合わせて、自分の夢を選んでいる子もきっといると思うのです。
 ひさしぶりの坊さんモードに入りますが、親鸞さん(浄土真宗の祖)の教えて下さった生きかたでは、夢も希望もいりません。逆に夢を持つということは、現在不満足な私がいて、将来達成されるであろうはずの満足を追い求める姿であるよと言います。人間はいつ満足できるのでしょうか、満足するとしたら「今でしょ!(ちょっと古いですね)」であります。人間は、誰もが、どんな人もが「いま、ここに」しか生きることができない存在です。過去に満足したことのある人の満足は、すでに過ぎ去った満足ですし、将来満足する予定の人の満足は、未だ感じることのできない満足です。だから、「いま、ここ」を大切にすることを忘れたら、満足することは決してできませんよと教えて下さったのです。
 世間では子供たちが勉強しなくなったとよく言います。夢や希望を持って学業に励みなさいと教えても反応があまりないと言う学校の先生もいます。きっと、日本の生活が豊かになってしまって、勉強するのは豊かさを獲得するためという論理が機能しなくなったのです。こども達にとっては生きにくい時代になってしまったなと思います。だから、親鸞さんの智慧を拝借して、いま、ここに、この瞬間を満足できることを目指して生きることを薦めたいと思います。こどもたちが生きるのはこれからです。これまでを育ってきた大人たちとはまた違った「これから」をかれらは生きます。こどもたちが、これまでの論理を越えて、満足する生き方を獲得できるよう大人として支えたいと思う、この卒園の時期であります。