平成21年度 1月のおしらせ

「こどもは、なんでもすぐに覚えられていいねぇ」
ほんとうにこどもたちは記憶力がよいですね。
ところで、ある脳の研究をしている学者さんの本を読んでいたら、このようなことが書かれていました。
「歳をとったせいで記憶力が衰えるというのはマチガイです」。
人の記憶は脳の海馬というところがはたらくのですが、歳をとっても海馬のはたらきは衰えないそうです。でも、大人はなかなか覚えられないですね、なぜでしょうか。じつは、大人はものごとに出会ったときに、脳にシータ波があまりでないそうです。シータ波は「面白いと感じたとき」、「知的好奇心を持ったとき」、「探究心をもったとき」にでるそうです。そして、シータ波がでないと、脳のパフォーマンスは落ちるそうです※。
こどもたちは、「見るもの」、「聴くもの」、「触れるもの」のすべてに新鮮な驚きを持って接しています。よく言いますね、「これ、なーに?」って。好奇心は記憶にとって、とても大切なのです。大人は、生きることに慣れてしまったので、シータ波が出ません。マンネリ化して、もう、驚きも、好奇心もないので、なかなか覚えられないのです。
だから、本当は、「こどもはなんでもすぐに覚えられていいねぇ」ではなくて、「こどもは好奇心たくさんでいいねぇ」なのです。
誰のどの本に書いてあったかは、副園長に聞いて下さいね。
※ ちょっと乱暴に言ってますが、出典では、「見かけ上の脳の機能は低下」だそうです。

平成21年度 2月のおしらせ

このごろ、
「生きる力」っていうけど ?

フランクルという精神科医の人がおります。ナチスの強制収容所より奇跡的に帰還して、「夜と霧」というとても有名な本を書いた人です。ロゴセラピーという精神療法を始めた人でもあります。
そのフランクルさんが「非人間的で過酷な強制収容所を生き抜いたのは、強靭な肉体を持ったものでもなければ、タフな精神をもったものでもなかった、日常の中に意味を見つけられるものだった」といったことを述べています。野に咲く花の美しさを賞(め)で、ユーモアを解し、夕日をみて歌をうたうといった人たちこそが、強制収容所を生き抜いたそうです(詳しくは「夜と霧」に書いてあります)。うーん、これこそ「生きる力」だ!
ならば、花の美しさを賞で、ユーモアを解し、夕日をみて歌をうたうことを園で教えることにしよう。
おっとっと、そんなことは、教えられないのです。「どう、夕日きれいね」って同意を求めてたってダメです。本当は、まわりの大人たちが楽しんで、感動する姿を見ることによって、子供たちは覚えるのです。私事ながら、二十余年前に通った美術大学で、へんてこりんな現代美術の作品を観る喜びを知ったのは、作品を観てうひゃうひゃ、わくわく感動に浸って見せた大学教授、講師達の姿を通してでした。
子供たちの「生きる力」を左右するのは、私たち身近な大人がつくりだす環境なのです。子供たちの育つ環境は、とても重要な育ちの機会でもあるのです。

平成21年度 3月のおしらせ

「わたしたちは、こどもの そだてかたを しらない」
なんて、幼稚園にかかわる人間が言うとおこられますが、よくよくかんがえてみれば、私達は誰も人の育て方の正解を知りません。携帯電話や洗濯機には正しい使い方があって、それは 説明書をよめば書いてあります。ところが、人には説明書がありません。近年人間の設計図と言われるDNAの研究がすすんだり、人の脳の構造が解明されたりして、いろいろと興味深い事柄を知ることはできますが、決定的な正解というのは誰も知らないのです。
子供の育て方を知らないのですから、いちばん安全で確実な育て方は、これまで両親が自分を育てたように、祖父母が両親を育てたように、昔から繰り返されてきた育児方法を繰り返すことになります。だって、私たちの先祖のどこかで失敗して 子供が育たなかったなら、私達はいまここに存在しません。人の歴史は繁栄と衰退の繰り返しですが、人がいまでも、絶滅しないで生き続けていることは、確保されているのです。
ところが、とても困ったことに、私たちが育ったように、両親が育ったように、私たちの子供たちを育てようとしても、世の中のたくさんのことが変化していて、これまでと同様に育てることが困難になっています。
私たちの頃と比べて子供たちには外に出て、友達と勝手に遊ぶことが難しくなりました。
高度に発達した娯楽にかこまれて、自発的に遊びを発明する機会が失われたかもしれません。
市場主義のなかで、効率的に勝ち残ってゆくことだけに集中すれば、生きるよろこびに出会うきっかけを失うかも知れません。
環境が清潔すぎて、身体の免疫系が育たないかもしれません。
あげれば まだたくさんあるかもしれませんが、「これまでのようにいかない」ということはたしかです。
「なるべく 昔のこどもが そだったように育てる。」このことが、これから育児の根幹として ますます重要になると思います。