今月のえんちょうのことば

えんちょうが毎月あたまをひねって絞り出したことばです。
お坊さんモードでお話いたします。

こどもとしぜん

園長は都会の子育てより、田舎の子育てのほうが断然イイことがあると考えています。そのいちばんは、自然のなかで子育てできるということです。自然とはなんでしょうか?それは「人間のつくったものでないもの」ということです。整備された公園は、木がたくさんあっても自然とはいいません。人間のつくったものとは、「人間にとって役にたつものだけある」ということです。都会の街中に用途のないものはありませんね。公園には植物がありますが、その植物も人間にとって都合のいい植物だけあります。芝生は管理され保護されますが、草は生えると抜かれます。人間のこころでいるものだけ残して、いらないものを捨て去った世界です。それはまさに100%人間がつくった便利な世界です。けれども、その人間がつくった世界で、ひとは魂をすり減らし、生きる意欲を失います。なぜでしょうか。
役にたつものを残して、役にたたないものを捨てるという生活は、そのまま自分の生きている意味をも「いる」「いらない」で測ってきます。それは、順調な生活をしているうちはいいけれど、病気したり、仕事ができなくなると生きている意味が失くなるのです。楽しいことがない人生なら、生きる価値がないと思ってしまう。人間の一生は生まれて、いろんな目に遭って、老いて、と続きます。けっしていいことばかりじゃありません、むしろ苦しいことが多い。だから、いいことだけを拠り所にした生きる意味じゃ、とても保たないのです。生活がうまくいかないとき、いるものだけを残す世界は、人間自身の「生きていること」を傷つけるのです。
こどもと自然のなかにはいって下さい。海でも、山でも、原っぱでも。いるものなのか、いらないものなのか判断もつかないものがたくさん、どうどうと、存在しています。そうです、世界に存在するために、人間の考えた価値なんて必要ないのです。それをもっともリアルに教えてくれるのが自然です。「森の幼稚園」というものがあります。もとは北欧、ドイツからはじまった、こどもを森、自然のなかで育てる幼児教育のカタチです。自己肯定感(学びと努力の源)、非認知能力(テストでは測れない能力)、身体感覚(考える源)にとても効果がある幼児教育です。はくい幼稚園は「森の幼稚園」を名乗っているわけではありませんが、はくい幼稚園にもちいさな自然は用意してあります。知っているでしょう、園庭の、木の生えたあんまり掃除もされない落ち葉のたまったところ。お出かけして触れる自然もありますが、園児のまいにちの生活に、ちょっとした自然があるのです。

えんちょう先生