今月のえんちょうのことば

えんちょうが毎月あたまをひねって絞り出したことばです。
お坊さんモードでお話いたします。

コロナ禍(か)

 今年はもうどうなってしまったか。3月の予想を越えて新型コロナウィルスは世間にひろまり、日常生活の一部になりました。幼稚園も新年度がはじまったとたん休止状態になりました。きっと、みんな新年度になった実感が持てないのではないでしょうか。
 このままだと今年は、なーんにもできない1年になるかもしれません。たいへんだ!けれども、こどもたちにとって、なーんにもしない1年は決して無駄な1年ではありません。何事も無駄と切り捨てるのは創造力のない証拠。こどもたちにとって、この感染予防生活は何になるのか。
 絵本作家の五味太郎さんは、「休校はチャンスだぞ」と、こどもたちに呼びかけています。コロナ禍は大変不安だけど、コロナの前は安定してた?居心地は良かった?と尋ねていらっしゃいます。コロナ禍の騒動がなければ、きっと予定したことを順番にこなして大人になるだけでした。入学卒業をくりかえすだけで大人になってしまう。人生のいろんなことが半ば自動的に決まって、入学、卒業、就職、とながれていって、気がつけば退職金を受けとる歳かもしれない。コロナ禍がもってくるのは「考える機会」です。コロナ禍のまえだって、働きかたとか、環境問題とか、考えるべきことはあったのです。けれども、毎日の予定、学校、宿題、仕事、生活に忙しくてそんなこと考える時間がない。経済活動を止めたら世の中大変なことになってしまうから、とりあえずは毎日の予定が大事だ、となっていたのではないでしょうか。その経済活動が止まりました。それも世界中で。だから暇つぶしをして済ませたらもったいないのです。こんなに家族で一緒にいて、料理をしたり、本を読んだり、ゲームしたりする機会はこの先めったにないのです。いまの巣篭もり生活が、そのまま幼稚園児には育ちの環境でもあるのです。
「前よりよくしましょうよ。」というのが五味さんの提案。
「じょうぶな体がいいというけど、それはずっと働かされちゃう体。かしこい頭ってきりがないし、いざというときに意外と弱い。今こそ自分で考える頭と、敏感で時折きちんとサボれる体が必要。」
五味さんの提案をきくと、感染予防ばかりになって暗かった日常生活に、前向きなところができるのじゃないですか。
「不安定だからこそよく考える。不安とか不安定こそが生きているってことじゃないかな。」
そうですね。順調なときはなぁーんにも考えないのです。こんなときだから、不安定を活かしましょう。

えんちょう先生