今月のえんちょうのことば

えんちょうが毎月あたまをひねって絞り出したことばです。
お坊さんモードでお話いたします。

子育ては 急がず焦らず。

 子育てとはなにか、子育てといえば教育、教育といえば習いごと。と、とかくがんばりがちな時代ですが、子育ては「急がず焦らず」も大事と思うのです。小学生でやることを幼稚園ではじめて、中学生でやることを小学生ではじめる。そうすると小学生になったときにいい成績をとれる。中学生になったときに有利に運ぶ。たしかにそうではありますが、小学生、中学生で有利に運んでもそのあとがながい。早期教育でしあわせになった話など聞かないので注意が必要です。
 幼稚園はもう言葉をおぼえたり、字をかいたり、ちょっと外国語に触れたりと、知識教育のはじまるばしょです。けれどどうじに大事にしたいのは、やる気。これは試験をして確認するわけにいきませんから科目として登場しませんが、ながい人生においては知識以上に要(かなめ)なものです。そのやる気を育てるのが急がないこと。こどもが興味をもってはじめたら、2、3日でも1週間でもほおっておいてあげる環境です。人間の育ちはひとりひとり違うのがほんとうですから、遅いことがあっても焦らない。周囲が焦ることでよいことなんてひとつもありません。大学にはいった18歳ごろ、社会人になった20歳すぎで人生が決まるような錯覚がありますが、実際の人生はもっとながいです。お釈迦さまは、お金持ちにはお金持ちのしんどい苦労があるとおっしゃいました。有名人には有名人のしんどさがあります。もちろんお金に困っても苦しい。いったい何を言いたいのかと言うと、人間の人生はどうなっても苦しいということです。人生で自分より苦しんでいそうなひとにあうと、「こんなひとでもがんばっているんだ」と、元気がでるときがありますが、それほど思い上がって間違ったこころはありません。そのひとが苦しいのか、喜んでいるのか、それは条件ではなくて心で決めることだから、他人にはわからないのです。余命宣告されたことで毎日の生活が濃厚で意味のあるものになったと喜ぶひとがいます。なにか障害をもって生まれても、毎日意欲的に人生を楽しんでおくるひとがいます。その源(みなもと)がやる気です。やる気をたいせつに育て伸ばすことは、幼稚園のわすれちゃいけないことです。それは幼稚園のころだから効果的に育むことができます。小学校に行ったらたくさん本を読んで下さい。思考力を育てるのは小学生のときの読書です。急ぐよりさきにやるべきことがあるのです。

えんちょう先生