今月のえんちょうのことば

えんちょうが毎月あたまをひねって絞り出したことばです。
お坊さんモードでお話いたします。

いい子ももんだい。

 幼稚園のとしごろは、伸びる土台を育てる時期。習いごとなら早いほうが有利と、いろいろ子育てにちからがはいる時期でもあります。そんな家族の願いを受けとめて、一生懸命がんばるこどもは理想のこどもで、言うことを聞かないこどもは問題児などと見がちでありますが、そこはどっこい、いい子も大問題かもしれません。
 園長がたよりにする哲学者、心理学者の方々には、人生順調にいい子で、成績優秀でいい大学まですすんで、ところがひじょうに精神的に苦しんで、結果親を恨むことになったと告白している方々があるのです。それも何人も!べつに親に虐待されたとか、厳しくされたというわけでないのです。親は優しく理解があって、子どもをはげまして夢の実現に努力したのです。それがどうして? ??
 子どもは家族に褒められることが大好きです。家族に喜んでもらうことを誰よりも純粋に思えるのは子どもだと思います。だから、親の夢が子どもの夢になる。子どもだって楽しいのです。家族と一緒になって一生懸命にできることが。それが上手く行かなくなるのは中学生の頃からです。自分の本心と親の期待が違うことに気がつき始める。本人は疲れてきているのに頑張ることをやめられない。周囲の期待を背負って心は自由とやわらかさを失い、親と自分に追いつめられて苦しむのです。ある心理学者は、なんでも買ってくれ、かいがいしく面倒をみてくれた親だったけれども、親の思った子どもと違うほうに行きそうになると、暗に、しかし非常に強制的に親にとってのいい子にもどされた、それで身体を壊し長く苦しんだ、その原因が親子関係だったと知ったのは、大学に入ってからだったと書いておられます。ある哲学者は、自分にたいしていつでも、どんな方向に行っても期待を寄せてくる親のために、親と絶縁するまで苦しみ抜いたと書いています。みなさん学歴とかキャリアとか華々しい方々なんです。結果立派な哲学者、心理学者、社会学者になったのならいいじゃないとも言いそうになるのですが、当人は「死のう」と思うほど苦しんだと書いていますから、結果家族との関係も壊れたそうですから、やっぱ気をつけたほうがいいでしょう。
 こんな事例をみたらどうやって子育てしたらいいかわからなくなりますね。とくに幼児教育は、親にも頑張っていい親になることを勧めがちです(反省)。期待は幼児期のこどものエネルギーになる。同時に期待は思春期の子どもの心を壊す、かも。どうしたらいいんでしょうか。園長思うのです。大事なのは親は親、子どもは子ども、別の人生を生きる独立した人間という自覚じゃないでしょうか。そして、教え育てるのが困難ならば、自分の背中で示すのです。だって、子どもはいつだってちゃんとみていますから。いちばん大きな影響の、親という人間を。

えんちょう先生