自分を壊し、他人も傷つける事件が目立ちます。「どうしてそうなったか?」という考察のなかに生活環境、親子関係ということが挙がります。生活環境はそれぞれまちまちですが、識者の方々が考える一因として、親子関係に共通するものがあります。それは、こどもをコントロールしようという親がこどもの人生を傷つけるということです。いくら豊かに不自由なく育てても、よい学校をでて、よい職業についても、心が傷ついていればこどもの人生は台なしになります。事件にならなくとも、ひきこもりを経て、生きることを放棄して、死に至ったケースもあるのです。コントロールする親の特徴としては、親の言うとおりのレールを歩けば受け入れてくれるけれども、親の意に沿わないことになれば存在を否定されるということです。今度親からの体罰が法律で禁止になりますが、体罰を用いなくてもこどもを深刻に傷つけることはあるのです。
ところで、社会的に未熟な人間を独り立ちさせるのが子育てであり、教育です。そして、子育てにコントロールは不可欠です。こどもが安全に育つように、こどもが将来困らないようにコントロールするのが日々の子育てというものです。それも駄目だと言われれば、子育てそのものが成り立たなくなります。コントロールも程々に、なんて言われても加減が分かりません。そこで、社会学者の宮台真司さんが興味深いことをおっしゃっています。それは「コントロールしないわけにはいかないけれど、フュージョンすることも大事」ということです。「フュージョン!」昔音楽のジャンルにそういうのがありましたが、フュージョンとはどんなことでしょうか。音楽のフュージョンは「融合」という意味ですが、子育てでは「委ねる」という意味を持ちます。「(こどもを信じて)おまかせする」ところを子育てのなかに持つということです。なにも意識しなくともコントロールしてしまうのが親の性です。だから意識してフュージョンしてみましょう。
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