「みんなしてるでしょ」そう言ってこどもにガマンさせたり、なにかさせたことはありませんか。「みんながみてるでしょ」と、言ってこどもをとめたこともないですか。この「みんな」という言葉は、子育てではあまり使いたくない言葉です。けれど使っちゃうんです。それは、効果があるから。
園長が「みんな」という言葉をよく言わないのは、「みんな」は人間をおどす言葉だからです。おどす言葉は言うことをきかせることはできるけど、人間を消極的にする言葉でもあるからです。こどもの成長、成熟にもっとも大切な、自分で考えること、積極的に冒険することを「みんな」という言葉がおさえてしまうのです。
どうですか、「みんな」ときいて怖くないですか。「みんなあなたみたいなことはしないよ」「みんながあなたのことをこうおもっているよ」そんなことを言われると園長は怖くて悲鳴をあげます。人間は社会をつくって生活していますから、自分じゃないひととの関係は大事です。朝起きて水道をひねると水が出るのも、畑をやらなくても牛を飼わなくてもスーパーで食材が買えるのも、ネットが自由にみれるのも、人間が社会をつくって生活するからです。そのなかで、自分をだすことは必ずリスクをともないます。仏教でも「五つの怖畏(ふい、おそれ)」というのがあって、その、人間が怖れる五つの三番目に「居場所がなくなる怖れ」、四番目に「悪い評判がでる怖れ」、五番目に「自分の意見を『みんな』のまえにあきらかにする怖れ」と、「みんな」に関わる怖れがでてきます。だから、「みんな」には注意すべきです。けれども同時に「みんな」というのは実体がないのです。たくさんのひとの前で意見を言うと、みんな空気を読んで反対するかもしれない。だけど、ひとりひとり話しあってお願いすると、賛成してくれるかもしれない。「みんな」というものはどこにもいないのです。人間が集団になったときだけあらわれる、それが「みんな」です。「みんな」には実体がない。だから取り扱い注意です。「みんな」がどう思っているのかを思うのは実はわたしですから、「みんな」のことを思いすぎると生活が流され、振り回されます。「みんな」に配慮するとある意味「安全」ということがありますが、安全に長生きしてもそこに「わたしの人生」というものが感じられなければ「わたしの人生は何だったのだろう」と言わなければならないのが人間です。
こどもの成長は「みんな」との対決のなかにあります。自分の人生を行きたい、だけど「みんな」とも折り合いをつけて生活していかねばならない。「みんな」は無視できないけれども、「みんな」ばかり気にしても生きた甲斐がないのです。だから、園長はこどもにはあんまり「みんな、、、」と言いすぎないほうがいいと考えるのです。
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